表紙で買った本 (連載 bP)



   友人のとも吉さんは本が大好き。長い外国生活の

あいだに出会った たくさんの本の中から

ポツリ ポツリと 気の向くままに

選んでもらって ご紹介いたします。


   

bP

           Wet Nursing


         これはヨーロッパにおけるもうひとつの女性史である。

         今はほとんど存在しない Wet Nurse(めのと・うばー
        自分の子供以外に乳をやる仕事)も昔は、それが女性の仕事として
        立派に成立していて中世のヨーロッパとくにフランスの貴族達は
        ほとんど自分達の子供をWet Nursing に出していたそうである。
        (売紙の絵はルイ14世とうば)

         けれど そんな中で自分のすべての子供を自分の乳で育てたとい
        う話が出てくる。(12人)このごく自然な行為も当時は墓に示して残
        すぐらい特別な物だったのか、今それを読むとずいぶん興味深い。

         人は乳で育つ。けれどそこに生じるのが母と子のきずなで
        ある。乳を与える者は覚えているけれど与えられて育つ私達の
        幼児期の記憶はほとんどない(皆無でする)けれど
        精神的にどこかで覚えているのかもしれない。

         やぎの乳を飲ませると やぎ子になったり、やぎ男になるなどの
        話も当時は信じられていたようである。
        笑顔がやさしく暖かい感じの人に出会うと、この人は
        沢山おっぱいを飲んだんだなあと思うようになったのも
        この本を読んでからである。



WET NURSING
A History from Antiquity to the present

Valerie Fildes / 1988 / Basil Black Well