表紙で買った本 (連載 92)


   友人のとも吉さんは本が大好き。長い外国生活の

あいだに出会った たくさんの本の中から

ポツリ ポツリと 気の向くままに

選んでもらって ご紹介致します。




92


THE FAIRY TALES OF HERMANN HESSE

Hermann Hesse



これはヘッセが描いた、現在でいうところの

おとぎ話風の話を集めた本だ。

「 メルヒェン ( Marchen,1919 ) 」という本が以前出版されたが、

それは8話しか集められていない。

それに比べると、この本には22話集められている。けれど

これも完全版ではない ( 版権の都合により5話無収録 )。

最初の 「 こびと The Dwaef (1904) 」 から始まって

最後の 「 アイリス Iris (1918) 」 まで、

ヘッセの人生観が読み取れるが、楽しさより

悲しみの色が濃く深くなっていくのも本当だ。

この本の中で笑える話は一つも無い。

1914年には世界を巻き込んだ第一次世界大戦が始まり、

ロシアでは革命が起きる。

物質文明で溢れてだめになったヨーロッパからの

ささやかな贈り物とみると、

メルヒェン ( おとぎ話 ) は、当時のヨーロピアンには

痛くて辛い本だったに違いない。




Hermann Hesse

The Fairy tales of Hermann Hesse
( C ) / 1995/ Bantam